妖怪ガチャ

ただひたすら妖怪の紹介をしていくブログです。

堕ちた神具「飛銚子」

概要

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植田孟縉 編「日光山志」より植田孟縉 自ら描いた「総図」

 

栃木は男体山にて修験道者が良く目にした怪異。蓋の空いた銚子のような姿をしており、小鬼が好んで玩具にしていた。

これだけ。

 

日光山に関わる歴史・地理・祭事や日光山八景の詩などを図入りで解説した書、「日光山志」に記されている怪異とのことですが、情報が殆どありません。

(ちなみに日光山志はここで公開されています。また、有名な絵師が挿絵をており、こちらでその挿絵が見られます。)

 

となるとなぜこのような怪異が見られたのが自分で調べるほか無いでしょう。

なので今回の記事は90%自分の妄想です。(いつもそうかもしれない)

悪しからず。

 

男体山と鉄鐸

まず何故男体山で銚子のようなものが見られたのか。その辺の登山者が捨てていったもの…では怪異になる理由がありません。

ここで気になることは、男体山山頂遺跡では鉄鐸(鉄でできた鈴のようなもの。)が131個も出土している事です。

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銚子。懐石などを食べる際にお酒などを注ぐ道具

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鉄鐸。昔日本史で習った銅鐸の鉄版

 

鉄鐸とは神事の際に音を鳴らすための神具。それが131個も出土したという事は男体山では何かしらの強い信仰があり、大きな神事が行われていたという事です。おそらく銚子もこの神事に使われていたものだと考えられます。

しかし一体何の神様が祀られていたのでしょうか?

 

日光と諏訪

男体山山頂遺跡で出土した鉄鐸は「サナギの鈴」とも呼ばれている。こちらのブログによるとナギは古代語で「蛇」という意味らしい。つまりここで信仰されていたのは蛇神の可能性が高い。

また、なんと諏訪大社で祀られていた鉄鐸も同名の「サナギの鈴(佐奈伎鈴)」と呼ばれている。つまり諏訪大社で祀られている鉄鐸が日光で発見されているという事である。

諏訪で蛇神と言えば、そう「ミジャグジ様」である。

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諏訪大社。ミジャグジ様と言えば女神が転生するRPG弾幕が飛び交うシューティングでおなじみ。

 

ミシャグジ様は石や木を依り代にする神様で狩猟の神様ともいわれ、諏訪を中心に東日本の広範囲に愛されていた古い神である。

男体山(二荒山)で信仰されていたのはこの「ミジャグジ様」ではなかろうか。

実際男体山のふもとにも諏訪神社はいくつかあり、信仰の痕跡が認められる。

 

神具から怪異へ

しかしそんなミジャグジ様も人の文化が狩猟から農耕に移るにつれて信仰が薄れていった。そして古事記の国譲り譚で負けたタケミナカタの神との戦いで敗れ、諏訪の国を譲り渡したという。

そして男体山での神事も時の流れとともに忘れ去られていき、ミジャグジ様にお供えするお酒を注いでいたであろう銚子も、怪異として小鬼の玩具になっていったのではないでしょうか。

 

そんな怪異も時と共に忘れ去られ、すべては過去の遺物となっていきました。

全ては私の妄想ですが、時の流れというのは残酷である。そんな飛銚子のお話でした。